「子どもを産んで一人前」
みたいなことを平気でいう人、いますよね。
でも、子どもを生むだけなら、人間以外のすべての生物だって、
みんなやってます。
ネズミだって、オケラだった、アメンボだって。
「無」から「有」を生み出せる人が一番偉い、と前に書きましたが、
「誰かに何かを教育する」
というのは、お産よりも大変なことで。
東村アキコさんのマンガ
「かくかくしかじか」
に出てくる「先生」は、まさにその「教育」者なんですよね。
「先生」は、学校の先生ではなく、市井の、一介の絵画教室の「先生」だ。
でも、誰よりも熱く、厳しく、生徒たちを鍛える。
白いカンバスに向かうときは、誰でも怖くなる。
ちゃんと描けるだろうか。
自分には才能がないのではないか。
こんなことやって、なんになるのだろうか。
それを、「先生」は
「描け」
のひとことで、背中を押す。
「無」から「有」を生み出す瞬間の「恐怖」と向き合い、
そのあとの自分の技術のなさという「現実」に向き合い、
そして、それでもなにかを生み出した、という「快感」に向き合う。
そのことに背中を押してくれる「先生」に出会える人は、
ほんとうに幸せなのだ。
「先生」は、東村アキコさんをはじめ、たくさんの教え子たちを
生み出した。
そういう、名もなき「先生」が、ずっと古代からいたからこそ、
人間たちは今に文化を生み出してきたんだと思います。
それは、実は「お産よりも尊い」、
人間にしか出来ない技なんでしょうね。
そう、「描け」。
そして、「書け」。
そう、なにかをゼロから生み出さなければ、なにもはじまらない。