【〈孤独〉と〈つながり〉を愛する上質なフィクション7冊】
あなたのために、孤独と向き合いながらも、人とのつながりの素晴らしさを描いた上質な小説(フィクション)を中心に7冊セレクトしてご紹介します。
お手にとる機会があれば、ぜひ。
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6冊目は、中村文則さん「私の消滅」です。
「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。」
こんな衝撃的な言葉で始まる小説。
これでページをめくらないでいられる人、いませんよね(笑)
孤独を描かせたらピカイチの、中村文則さん。
「銃」や「教団X」など、この方のエログロ追い詰められ系の純文学が大好きです。
(これを純文学というのかどうかも謎ですが)
どんなにエロでグロで絶望的であっても、
それを綴る言葉が洗練されているのです。
この「私の消滅」も、愛した女性が姿を消した。
その行方を追う「私」と、凄惨な過去を綴る手記。
その手記を読み進めていくうちに、
脳を操作して記憶を変えることができる医者が登場して、
「あれーー?なんだかおかしいぞーー?」
と嫌な予感に満ちてきます。
「私」は誰?「彼女」は誰?
もしかして、「私」が犯人なのか?
「I」という存在があいまいになってくることで、
読んでいる自分もわからなくなる。
今まで生きてきた記憶さえも、ほんとうに正しかったのか?
自分で楽しい記憶だけを捏造しているのか?
そんな足元が揺らぐ感覚にさせてくれる、
恐ろしくも楽しいフィクションです。